確か二〇〇四年九月がスタートでしたので、ほぼ八ヶ月間。長らくお付き合いいただきましてありがとうございました。
これにてグランヒストリアは完全終了となります。
で、普段あとがきなんか全く書かない私がどうして今回に限り書いているのかといいますと、こちらがほぼ完全なノベライズであり、私自身の作品というわけでは決してなく、そのためゲームと小説の中でどれだけの差異があったのか、それだけを明らかにしておきたかったためです。
【ゲーム中の選択肢】
実際、このゲームで一番面白いのは自分で歴史を選べるというところなんですが、やはり旧ハードのものですから、基本的には一本道、ただ選択によってはある程度世界記の記述が変わってしまうということがあります。
まず人物ですが、世界記には都合二〇名が登場、そのうち選択次第で最終的にはガイナスター、クノン、ゼノビア、ミケーネ、ミジュア、サマン、ファル、ドネア、リボルガン、バーキュレア、カーリア、エリュースの十二名が生存可能。
ですがもし選択を誤れば、クノン、ゼノビア、バーキュレアの三名は亡くなります。
クノン〜八〇六年の誕生の際のトラブルで、大神官ミジュアを救出した後に急いで城に戻らなかった場合、八一七年にジュザリアに到着した際、クノンが死んでいることが判明します。城に戻ってくるのが遅れたため病弱となり、結局成人することができなかった、ということです。
ゼノビア〜八〇九年、ドネア暗殺をゼノビアが企んだ際に処刑することが可能(笑)。でも普通はしないですね。
バーキュレア〜八一五年、マナミガルの王宮に潜入する際にバーキュレアの体を借りるが、この時サマンが別の場所にいてその体を借りることが可能です。その場合バーキュレアは八一七年の全員集合の際に登場せず、八二三年の戦いで死亡する未来がそのまま訪れることになります。
ちなみにゲーム中、バーキュレアを最後に殺してしまいましたが(爆)、もちろん最終パーティメンバーは別に死んだりとかはしません。盛り上げるための生贄でした(を)。エンディングにクノンやゼノビアが出てこないのは、選択次第で亡くなってしまうので、製作者(バンプレスト)が登場させなかったのだと思われます。
【選択肢】
1.八〇五年、鉄道襲撃の際、ミケーネについていくか、ガイナスターと行動を共にするかが選べます。このときミケーネについていった場合、八一四年にガイナスターと再会したとき、所持金の半分を渡すことになります。
2.八〇七年、天使暴走事件の後、東部自治区の領主になるかどうかを選ぶことができますが、結論としてどちらにしてもその後の歴史には全く影響を与えません。せめてザーニャの生死が変わるとかだったら、選びがいがあるんですけどねえ……。
3.八〇七年、ユクモ沈没の際に召霊玉を持っていなかった場合、ユクモが爆発します。その際リザーラの力で三人だけがドルークへ転移することになります。
4.八〇八年、ガラマニアでドネアを連れて逃げてほしいと頼まれた時に、引き受けるか引き受けないかを選べます。いずれにしてもゲ神ドネアを連れてドルークへ行くことには変わりありません。
5.八一一年、神殿解放令をケインに会った後に出すことができます。いずれにしても解放令は出るので、物語に影響はありません。
6.八一二年、豪族の反乱と疫病に強い種を探しに行くのと、どちらを先にするか選ぶことができます。疫病に強い種を探すことを後にした場合、種まきの時期に間に合わなくなるので、次の年に被害が出ます。所持金の半分がなくなります。
7.八二五年、最後のスイッチで左を選択することができます。その場合、ザ神が完全にいなくなりますので、ミジュアやミケーネらもゲ神に改宗しなければならなくなります。そして世界全体が不毛の時代となり、戦争をする余裕など全くなくなります。争いはありませんが、こちらの方がひどいエンディングでした。
こんなところですかね。ちなみに静夜が一九九五年に初回プレイした時は、クノンとバーキュレアは死亡、ミケーネについていったので所持金はなくなる、ユクモは爆発して乗客は全滅する、解放令は出すと、全然いい王様ではありませんでした(笑)。さらに最後の選択でも左を選び、誰も救われないひどいものになってしまったのを覚えています。でも疫病の種だけは先に行きましたよ。
【小説追加イベント】
1.基本的に、アルルーナとの会話はゲーム原作には全くありません。彼女は常に『あなたの成すべきことを示しますか?』と尋ねてきて、これから何をしていいかわからないプレイヤーに道を示してくれるだけのキャラクターです。だからアサシナに入れなかったりしたら大変(笑)。
2.細かな会話の追加はあげていけばさすがにキリないです。基本的に日常会話のレベルにあるものについてはすべて静夜の追加と考えていただければ大丈夫かと思います。八一一年なんて神殿解放令出さなかったら何もイベントがない年ですし(笑)。
3.ザコバトルは当然全部静夜の追加です。時折こうしたものも混ぜないとイベントだらけになってしまいますので、ゲ神やザの堕天使などをあちこちに散りばめました。量としては妥当だと思ってますが。たいがい新メンバーになったらバトルを入れたりしてましたね。
4.ドネアとは結婚なんかしませんし、そんな約束すらしません。はっきり言ってしまえば、ドネアについては全くといっていいほど、物語に絡んできません。確かにアサシナに残りはするのですが、パラドックとの一連の結婚イベントが終わった後、彼女がらみのイベントはゼロです。ありません。さすがにこの扱いはひどかろうということで、静夜が無理矢理にイベントを追加しました。そして読者様からの人気というか気にしていただいたのが多いのもドネアだったんですよね。そりゃ一国の王女様が別の国にいるんだから……少しはウィルザもかまってやらないと駄目だろーとは思ったんですよ。で、五年と区切ってウィルザの体が奪われたら都合よく結婚がうやむやになると(爆)。
5.カイザーはもっと権力あります。その権威たるやゲーム本編では国王を上回っていました。というのも、カイザーはすべて後ろ盾にザ神を持ってきているので『まさかザ神の決定に逆らうというわけではないでしょうな!』って、すごい強気なんですよ、国王に向かって(笑)。さすがにうちのウィルザもそんなオバカさんをほったらかしにできませんでしたので、容赦なく投獄しました。もちろん投獄イベントなんて素敵なものはゲーム本編にはありません。
6.上でも少し触れましたが、パーティメンバーに入ったバーキュレアは死にません。鬼とか悪魔とか言うな。うちのサイトで人死にが出ないのは不自然ってもんです(コラ)。
7.スペシャルエピソード、及び八二六年以後の歴史はすべてオリジナルです。ゲーム原作はラストエピソードのサマンのセリフ「アタシ、生きてみるよ」が最後です。あのセリフ重たくてジーンとくるんですよ。過去の名セリフ十傑に入ります。
というわけで、可能な限り原作を重視しましたが、さすがにあまりにひどいなと思われるところは静夜が部分的に手を加えています。さすがにカイザーごときに国政壟断されて黙ってる国王ってどうだろう……ドネアがずっと傍にいてくれるのに何年も声をかけてあげない男ってどうだろう……人型天使ということで人々から慕われてるのに全くイベントがないアルルーナってどうだろう……817年の全員集合以後、エンディングにすら出てこなかったドネアってどうなんだろう……そういったいくつかの疑問、納得のいかない点については追加・変更という形でノベライズしています。
【静夜の気に入っている点】
一にも二にも裏切りの展開、このストーリーはまさに静夜の原点の一つともいうべきものです。いくつか候補はありますが、
1.国王になるのかよ!(いや、そんな簡単に国王ってなれるもんでもないだろっていうか、クノンはどうするのーみたいな)
2.ルウが王妃かよ!(一番驚いたシーンです、本当に。いつか絶対ルウが出てくると信じ、待って待って待って登場したときには王妃でした。つーかウィルザも隣国の国王や王妃の名前くらい調べとけ/笑)
3.体乗っ取られるのかよ!(正直、これからどうなるんだという不安と期待でいっぱいでした。でもこの展開はまさに静夜が求めるものでした。ビババンプレ)
そして、微妙に張り巡らされる伏線。
1.八〇五年、ゲ神の王が「旅人よ。はるかなる時を超える者よ。今の汝、我とまみえるは初めてなり」と発言する。これは既に未来からやってきたレオンが三度目の力を手に入れているため『時を超える者』という表現を用い『まみえるは初めて』と言っている。やり直さないと分からないよこんなの〜。
2.八〇七年、リザーラとサマンが姉妹だと世界記に記録されていなかったというシーンがあります。これは血のつながりが全くないということを意味しているわけです。ついでに言うとリザーラが人型天使である最初の伏線になっているわけですね。
3.八〇八年、タンドがガラマニアの王宮内にいて、しかもドネアを『姫様』と呼んでいます。これはタンドがガラマニアに仕えるものであり、同時にガイナスターが出奔した王子であるということの伏線になっています。王子が盗賊なんかやるな(笑)。
これくらいが小説内で補完してない伏線ですかね。
あとはこうした伏線に加え、随所に加えられる名セリフ。
1.「ゴブジデスカ、ヘイカ」(八一四年、水天使)
2.「ひどいよ、お姉ちゃんは、お姉ちゃんなんだよ! ひどいよ!」(八一八年、サマン)
3.「アタシ、生きてみるよ」(ラストエピソード、サマン)
ゲームの最後にサマンが「アタシ、生きてみるよ」と言ったその場面で思わず涙。「生きるよ」ではなくて「生きてみるよ」なんですよね。亡くなった人の想いを受け継ぐけどそれが辛いような、そんな感じなのです。サマンを補完してあげたいなーとも思います。ウィルザ=レオンに会わなければこの子ももう少し普通の恋愛ができたと思うんですよね。
つーか、サマンってすごい綺麗なセリフを言うんですよ、一貫して。もうこのセリフ回し、ほしいなあと思います。
ちなみに静夜的最愛キャラはゼノビア。ガイナやミケも好きなんですが、ゼノビアの一本気な性格、かいがいしくドネアを世話したりウィルザが国王になってからも皮肉を連発するなど、おそらく国王時代に一番気を許してたのはゼノビアじゃないかなあ、と思います。こういう立ち位置のキャラは大好きです。
ちなみに一度質問があったんですが。
『この世界の通貨単位は何ですか』
答えましょう。
ですがこれは冗談じゃありませんから。本気ですから。改めてゲームをやり直して静夜が何よりショックを受けたくらいですから。そのせいで通貨単位をこの世界で一度も取り上げることができなかったくらいですから。
通貨単位:ネル
本気と書いてマジです。だからこの世界の人々は1ネル、2ネル、3ネルと数えるわけです。ぐはっ、いろんな意味でもだえそう(何が)。
というわけで、以上解説でした。
このゲームに出会えたことは静夜にとって大きな喜びでしたし、この小説をモチーフ(赤い星と青い星や、騎士⇒国王⇒戦士と身分が変化する流れなど)にした長編小説設定もしたことあります。さすがに膨大なキャラ数になったため、全く着手するつもりはありませんけど(汗)。
グランヒストリアというものをこうして残しておけば、いつでも自分は確認できるわけですから、今後グランヒストリアを思い出したくなったらこのノベライズを読み返すことにします。
ではでは、また別の作品でお会いしましょう。
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