12.雪

『white wish』






 今年も冬がやってくる。
 初めて出会ってから、これでもう一年になる。
 最初のうちは、戦いの日々。
 すれ違いの日々。
 相手のことを理解しようともせず。
 それなのに気づけば、いつの間にかお互いのことを思いあうようになっていた。
 不思議、と言ってしまえばそれまで。
 でも、嫌じゃない。
 あれから一年の時間が過ぎた。
 戦いが終わって春が来て、一緒の季節を過ごしてきた。
 平和な春、平和な夏、平和な秋。
 そして、今年は二人で平和な冬を暮らす。
 寒い日には寄り添い、雪の日には手をつないで歩く。
 そんな、平和な日々。
 だが、そんな日々はいつまでも続かないことを知っている。
 いつまで一緒にいられるのかなんてことは、分からない。
 だから今を、一生懸命過ごすだけ。
 今日しか会えないのだと思って、甘えて、甘えさせて。
 幸せであることを喜び、
 幸せであることに感謝し、
 幸せであり続けることを願う。
 この幸せが、いつまでも続きますように。
 この人と、いつまでも一緒にいられますように。
 もうすぐ一年が過ぎる。
 平和な年。次の年も、何事もなく過ごせるだろうか。
 不安は多い。
 でも、この人と一緒なら、たとえ平和でもそうでなくてもかまわない。
 どんなに傷ついても、傷つけられても、最後に一緒にいられるのなら。
 その希望を信じて、いつまでも生きていける。
 でも、相手のことを傷つけさせたりはしない。
 絶対に自分が守る。
 どれほど自分が傷ついても、相手を傷つけるようなことはしない。
 相手にはいつまでも幸せでいてほしい。

「あ……」

 どちらからともなく、言葉がもれる。

「雪」

 最初の一つが、掌に落ちる。
 出会いの季節が、再び巡ってくる。
 今年の冬は、二人で過ごそう。
 幸せに。
 一緒に。

 そして、手を差し出す。
 手をつなぐ。
 その温もりが、二人の絆。
 いつまでも一緒にいられるのだという、未来への希望。





もどる