She’s got the long ebony hair blowing in the air
When she holds her bow, silence the nymphs vow
She’s got the glassy pale face with divine grace
When she takes an arrow, there won’t be a burrow

ιππασια ενας ασημενιος καρο
(chorus) “To the loved one”
στο νυκτα ουρανος που ωριων περιμενω
(chorus) “To Orion”

She’s been presiding over birthing and virginity
When she met him in a meadow, she was in a glow
She’s been presiding over hunting and fertility
When she shot the fellow, she quit lighting the below

ιππασια ενας ασημενιος καρο
(chorus) “To the loved one”
στο νυκτα ουρανος που ωριων περιμενω
(chorus) “To Orion”

Look at the moon tenderly hanging on to Orion
Look at Orion twinkling brighter than the moon
Look at Artemis… she is smiling like a little girl


アルカディアの山野が 囁くのを聞きなさい
雨と吹き荒れる強風の 叫び声を聞きなさい
妖精達のする 彼女等の主の話を聞きなさい

風に吹かれている彼女の髪は長くそして漆黒
彼女が弓を持った時 妖精達は沈黙を誓うのです
神の恩寵を受けた彼女の顔は生気のない白色
彼女が矢を手にした時 逃げ場などはないのです

(ギリシャ語) 銀の車に乗って    
(コーラス) 愛した人の下へ
(ギリシャ語) オリオンの待つ夜空へと
(コーラス) オリオンの下へ

彼女は出産と純潔を司ってきました
牧草地で彼に会った時 彼女は真っ赤になりました
彼女は狩猟と豊穣を司ってきました
恋人を射た時 彼女は下界を照らすのをやめました

(ギリシャ語) 銀の車に乗って    
(コーラス) 愛した人の下へ
(ギリシャ語) オリオンの待つ夜空へと
(コーラス) オリオンの下へ

月を見てみなさい オリオンに優しく寄り添っています
オリオンを見てみなさい 月よりも明るく瞬いています
アルテミスを見てみなさい 少女のように笑っています



「すっかり英語詩が板についてきたようだな」
 不機嫌そうな声で言うのはボーカルの颯兼年下の彼氏。もっとも、きちんと私が彼女認定されているかどうかは微妙なところだが。
「ま、これも才能ってやつ?」
「ふざけろ」
 一刀両断。これでも全力で歌詞作ってるんだけどなあ。
「このギリシャ語はどうしたんだ」
「あ、それ? 私もさすがに英語以上のことは分からないんだけどさ、やっぱりアルテミスっていったらギリシャ語じゃなきゃーと思って」
「お前の感性は分からんが、言いたいことは分かった」
「ねー、颯ってばさ」
 少しむくれてみる。
「がんばって歌詞作った相手にありがとうの一言もないわけ?」
「エフハリスト」
 突然意味不明なことを言われ、言われた私の方が呆然とする。
「ギリシャ語で『ありがとう』という意味の言葉だ」
「颯、ギリシャ語話せるの?」
「片言くらいはな。それに、お前の友人だって話せるだろう」
「友人?」
「ユウカ、とかいったか」
「ああ、あの子……って、ええええええっ!?」
 瀬波裕香。私の高校時代からの友人。確かに帰国子女だったはずだけど、私の記憶がたしかならばアメリカ帰りだったような気がする。
「つか、どうして颯が私の友人関係を把握してるのよ!」
「二十四時間ライブのときに応援に来ただろう」
「あー、あのとき」
 伝説のTROY二十四時間ライブ。五時間ごとに客を入れ替えて四サイクル延々と歌い続けたある意味馬鹿耐久レースライブ。二〇〇五年の正月に実施した。確かにそのとき彼女も花束をもって彼氏と一緒に来ていたけれど。
「よく覚えてるね、颯」
「事情があってな」
 颯は少し表情を翳らせる。
「なんなの、重大な話?」
「いや、お前には関係のないことだ。だが……そうだな」
 颯は歌詞を大切そうに折りたたんで胸ポケットに入れた。
「いつかお前には話しておかないといけないだろう。この町で起こっていること、それも、もうこの十年以上にわたっているひとつの『事件』についてな」
「え」
 一瞬、動きが止まる。
「それって」
「何も言うな」
 颯は言葉をさえぎった。
「そのうち、分かる」






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