静夜(以下『静』):『どきどき魔女神判』をやってみたい。
フェイト(以下『フ』):勇気ある者を勇者というのならまさに勇者の名にふさわしいですが、たぶん静夜さんのそれは勇気じゃなくて無謀。もしくは蛮勇。人格疑われるからお願いですからやめてくださいね。
静:いや、ネタゲーとしてはいいんじゃね? あれだろ? いたいけな女の子を連れてきてタッチペンであっちを触ったり息を吹きかけたりしながら魔女かどうかを見極めるという、一歩間違えるどころか購入時点で変質者認定を受けられるゲーム。
フ:最低だ!
静:さて、そんな『静夜とフェイトのプレイ日記』シリーズも第4回となりました。
フ:こんなに長く続くことができたのはひとえに読者様の熱い支持によるものです。
静:なおパルフェに関するメール・掲示板でのレスは全くありませんでした。
フ:支持されてねえ!!!
静:でもこの間メールが届いて『静夜さんの書くゲームレビューは実際にやってみたくなるところが凄い』って言われたんだぜ。で、急遽第4回目にこぎつけたってわけだ。風雨来記がやけに評判いいんだよねー。やっぱりエロゲは人気ないのかな。
フ:そのためにゲームに時間が割かれるという罠。
静:それくらいは仕方がないと割り切るしかないんだぜ。
フ:で、今回は何をやるんですか?
静:上記のとおり『どきどき魔女──
フ:はい! というわけで今回はDSのミステリゲーム新作『DS山村美紗サスペンス、舞妓小菊・記者キャサリン・葬儀屋石原明子、古都に舞う花三輪、京都殺人事件ファイル』をお届けします!
静:タイトルが長いよ。
フ:いやだって、パッケージにそう書いてあります。
静:なになに『“愛憎”のサスペンス、千年の時を刻む古都『京都』を舞台に巻き起こる殺人事件の数々。三人の美女が、絡み合う人間関係の解明に挑む。』……ほう、山村美紗め、自分のキャラクターを盛大に使ってきたな。
フ:静夜さん、山村美紗好きでしたっけ。
静:俺のミステリの原点は山村美紗なんだぜ。
フ:へえ、意外。かまいたちの夜じゃないんですね。
静:んー、あれはゲームだからね。
フ:じゃあ、山村美紗の何から入ったんですか?
静:『京都龍の寺殺人事件』
フ:ゲームじゃねえか!
静:馬鹿め。誰が山村美紗を小説から入ったと言った。
フ:言ってないけど今の会話の流れ! 明らかにおかしいだろ!
静:というわけで懐かしいですね、京都龍の寺殺人事件。犯人はヤス。
フ:違うし!
静:龍の寺はなかなか難しくてねえ……友人と一緒に詰まって解けなくなったことがあったよ。今みたいに攻略サイトなんてなかったからなあ。
フ:でも2作目の『京都花の密室殺人事件』は簡単でしたよね。
静:うむ。友人が『龍の寺』にはまったんで、じゃあ『花の密室』やろうぜ! って発売日に買ったら発売日にクリアして速効売ってた罠。
フ:つまらないんですか。
静:んー、俺は花の密室の方が好きだけど。でもトリックに無茶振りがあるからなあ、現実的ではないな。その点、龍の寺はトリックが洗練されてた。タイマー式クーラーを使った偽装トリックとかね。
フ:山村美紗の特徴ですね。その頃の最新機器を使ったトリックを行うっていうのは。コードレス電話をアリバイトリックに使った殺人とかもありましたよね。
静:今だと何使うんだろな。携帯電話……はさすがにもう古いかな。今回のDSにも何か使われてたりしたら面白そう。
フ:それから山村美紗のもう一つの特徴といえば!
静:そりゃもちろん『密室トリック』だろう。密室のない山村美紗なんて、ワトソンのいないシャーロックホームズ! ドラキュラの出ない悪魔城ドラキュラ! カトレアのいないパルフェのようなもの!
フ:最後の余計。
静:というわけで今回も期待させてもらうんだぜ! 美紗先生はきっと素敵にトリックをしかけてくれると信じてるんだぜ! 映像つきだから『叙述トリック』の可能性もほとんどないだろうしな!
フ:叙述トリックって何ですか。
静:作者が意図的に読者を誤解させたまま小説を進行させるトリックのこと。興味がある人は歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』でも読んでみるといいよ。これはびっくり。高校生の後輩に慕われてたりとか、妹から「お兄ちゃん」と呼ばれる主人公がなんと!
フ:なんと!?
静:読んでのお楽しみ。
フ:そこまで振っといてw
静:でも面白いよ。自分はこういう叙述トリック好きじゃないけど、でも最初から最後までぶっ通しで読み切った。あの『このミステリーがすごい!』で2003年の第1位に入った作品。文春文庫から発売中〜。
フ:はい宣伝はそのくらいにして、肝心の山村美紗ですが。
静:うむ。久しぶりのDSだな。1か月ちょっと前に世界樹をプレイして以来だ。
フ:あれも結局9階くらいで止まりましたね。
静:面白いんだが、何か長続きしなかったな。何がまずかったんだろう。
フ:やる気のなさ。
静:それだ!
フ:はいはい。それじゃ早くゲームスタートしてくださいね。
静:おう。というわけで準備完了。早速ゲームスタート!
フ:お、何やら妙な音楽が……ん、画面に何か出てきましたよ?
静:……2.5等身キャラクター。
美紗ちゃん『ごきげんよう。』
静:……。
フ:……。
静:……。
フ:……ぷっ。
静:……っぶわはははははははははははははははははははははははは! なんじゃこりゃ! 俺を笑い死にさせる気か! 誰かこのゲームを止めてくれ!
フ:これは腹筋ブレイカーですね。まさか『美紗ちゃん』で『ごきげんよう』で『2.5等身』。このコラボレーションは想像の範疇を超えてます。
静:はあ、笑った笑った。さ、じゃあもう寝ようか。
フ:まだ電源入れただけですが。
静:もういいじゃん。金払った分は充分笑ったよ。
フ:静夜さん趣旨変わってる! ゲーム買ったの笑うためじゃない! 推理するため!
静:はっ! まさかこんなところに罠をひそませていたとは! 山村美紗め、なんという恐ろしい叙述トリック……!
フ:それ叙述違う。
静:というわけで山村美紗に騙されないようにしてゲームを進めるぜ。
フ:誰も騙してないですよ。
静:まずはゲームの練習ということで、狩矢警部の事件をやることになったんだぜ。
フ:狩矢警部って山村美紗のゲームによく出てくる捜査一課の警部ですよね。
静:龍の寺のときはメガネかけてたんだが、今はコンタクトにしてるのかかけてないんだぜ。しかもいいオッサンになっちまって……くっ、あのうだつのあがらなさそうだった狩矢警部を返せ!
フ:かえってきてもこまりますが。で、結局何の事件なんですか。
静:『消えた懐中時計を探せ!』チャラララチャーチャーチャー、ジャン、チャチャチャチャーチャー!(BGM)
フ:それはまた。どんな事件ですか。
静:二日前になくした狩矢警部の時計。
フ:微塵も事件じゃねえ!
静:で、プレイヤーは狩矢警部となって京都中を歩き回り、ひたすら懐中時計を探していくというゲーム。
フ:ミステリーはどこへ行った!?
静:まあまあ。どうせプロローグなんだし。ついでに京都を歩き回るついでに知り合いにも会えるって寸法。
フ:ああ、タイトルの小菊さんとかキャサリンさんとか明子さんとかですね。
静:そう。ぶっちゃけキャサリン以外は知らない人なんだけど。
フ:さすが龍の寺で入った人はキャサリン以外読まない。
静:浜口一郎が弱弱しくてちょっと涙目。龍の寺のときはスーパーアドバイザーだったのに。
フ:小菊→キャサリン→明子と会っていくみたいです。簡単に説明をいただけますか。
静:小菊は舞妓さん。推理小説マニア。舞妓なら目立つだろうに殺人事件とかにかかわるんだな。日本画家の沢木潤一郎と恋仲。
フ:それから?
静:次が龍の寺でおなじみのキャサリン。カメラマン。経歴は元アメリカ副大統領の令嬢。モデルは多分女優のキャスリン・ターナーだろう。つか同姓同名。好奇心旺盛なおてんば娘らしいが、龍の寺やってた頃から考えればいいおばさ
フ:ストップ! 劇中では時間そんなに経ってませんから! 年をとったのは静夜さんだけですから!
静:失礼なことを言うやつだ。で、その恋人が京南大学の助教授、浜口一郎。メガネが弱弱しく見えるのが残念。
フ:最後は?
静:石原明子……うおっ、可愛い!
フ:琴線に触れましたね。
静:うむ! これはいい娘だ! とりあえず恋人の男は殲滅しておこう!
フ:いやまて。
静:で、この子は石原葬儀社の社長。父親が死んで家業を継いだらしい。もともと東京で仕事があったのにね。
フ:彼氏はじゃあ、東京の人ですか。
静:うむ。黒沢秋彦。内科医だそうだ。京都に来るときはいつも葬儀があるという不運の持ち主らしい。ざまぁw
フ:また低レベルな……。
静:しかし山村美紗のキャラクターって本当パターン通りだよな。女性がホームズ役で、男性がワトソン役。それもけっこう有能という罠。
フ:『ワトソン役は読者より少し能力が低いくらいが望ましい』というのがミステリの鉄則ですね。
静:というわけで気づけば懐中時計発見。
フ:い、いつのまにー!?
静:さあ、早速ゲーム本編に入るんだぜ!
フ:誰からいきますか? キャサリン?
静:もちろん明子に決まってるんだぜ!
フ:あなたは自分の欲望に忠実な人だ。で、明子編ではどんな事件になりそうですか。
静:えっと、友人の唐沢有樹って子がいるんだけど、この子が相談があるって。たぶんこの子が被害者。
フ:待て。それは推測か。
静:ゲーム進めてけばわかるよ。で、相談内容なんだが。大東菜々っていう子と待ち合わせてたんだが来なくて、それから二日間行方不明らしい。
フ:そっちが被害者じゃないですか。
静:ちっ。先走りすぎたか。
フ:菜々さんの家に向かいます。
静:管理人さんに鍵を開けてもらって、と。
フ:部屋は電気がついているみたいですね。浴室も明るいですが。
静:って、既に死んでるー!? チャラララチャーチャーチャー、ジャン、チャチャチャチャーチャー(BGM)
フ:ちょっとBGMうるさいです。
静:だってCM休憩意識してんのか、ある程度進むとアイキャッチ入ってBGM流れるんだもん。
フ:で、女性の方は調べないんですか。
静:……死亡、確認。
フ:ちょ、それまだ死んでないフラグw
静:自殺に見せかけてるね、明らかに。浴室で手首切って自殺? そんなうまく死ぬもんかい。っつーか浴槽の下に倒れてて手首自殺はねーだろ。誰だ偽装したやつ表出ろ。
フ:それは犯人でしょう。
静:そうなるとこの部屋は鍵がかかってたから密室だったということになるな。合鍵がなければ。
フ:管理人さんが持ってたじゃないですか。
静:じゃあ管理人が犯人でおk。
フ:待て待て待て。
静:うお、ある程度進んだところで『推理モード』に突入した。
フ:ここまでのところをまとめつつ、何があったのかを推理していくわけですね。静夜さんの書く小説みたいですね。
静:余計なことは言わなくていい。
黒沢『菜々のことを教えた人物は誰だったかな?』
明子『それは、この人よ!』
静:うはw 当たり前のことをオーバーアクションでやられると笑える。
フ:推理ものっぽいですね。金田一とか。「謎はすべて解けた!」みたいに。
静:お、結論出た。現時点までの状況は整理できた。やはり誰かに殺害されたのだろうか。
フ:新しいことが何も判明してません。
静:無駄な時間だったな。
フ:そうは言わずにw でもこんなのが頻繁にあると困りますね。
静:面白くはあるんだがな。同じ話を2回することで読者が把握しやすくなるし。問題はここで叙述トリックが使われる可能性があるってことか。
フ:ああ、読者のミスリードを誘うんですね。
静:まあ犯人は有樹で決まりだろ。
フ:まだ何も調査してないのに決めつけてるー!?
静:遺体に結婚指輪。
フ:ありますね。
静:実は有樹と菜々とカレシとで三角関係だったとか。
フ:はー。愛憎の末に、ですか。じゃあ有樹さんの動揺は全部演技?
静:だろうな。で、密室の件が多分これから問題になるんだろうけど。
フ:ええ。鍵の話はまだ出てきてませんね。
静:有樹がわざわざ明子を誘ってマンションに行ったのが問題なんだよ。
フ:といいますと。
静:菜々を殺害して普通に鍵をして出ていく→連絡が来ないと明子に相談→三人で見に行く→管理人に鍵を開けてもらう→死体発見まあびっくり→明子たちが死体を調べている間に鍵をどこかに戻しておく。つまり! 明子たちは有樹の密室工作のダシに使われたんだよ! チャラララチャーチャーチャー、ジャン、チャチャチャチャーチャー。(BGM)
フ:うわ、何その推理。まだ鍵の話一ミリも出てないのにそこまで推理しますか。
静:ふっ、名探偵静夜と読んでくれ。
【そんなこんなで明子編クリア】
フ:じゃあ名探偵静夜さん。クリアの感想をどうぞ。
静:教訓。犯人当ては、登場人物が全員出てくるまでやっちゃだめ。
フ:当然です……まったく、余計な推理に対する僕の感動を返してください。
静:つか密室の話とかなかったな。スペアキーとか何個ある設定だよ。母親から恋人からどいつもこいつも鍵持ちやがって。ぷんぷん。
フ:普通はそんなものかと。犯人が分かったのはどの辺りですか?
静:んー、有樹が全然絡んでこなかったので、きっと無関係なんだろうなーと割り切ったのが二日目。で、いろいろと容疑者しぼって最終的に全体像が見えたのが桜亭で『ガイシャは彼氏の前では●を●●●●』っていう情報を手に入れたところかな。それで容疑者が完全にしぼられた。
フ:なるほどー。やっぱり情報収集は大事なんですね。
静:うむ。これは推理ものじゃなかったな。どちらかというと捜査もの。自分の足で情報探して、結果として一つの真実にたどりつく、という感じ。自分の頭で考えたのはほとんどなかった。
フ:そうですね。この先もこんな感じだとちょっと残念ですね。龍の寺とか、アリバイトリックや密室トリックを自分で解き明かすのが楽しかったのに。
静:というわけで続けてキャサリン編いくぜ!
フ:はい。今度の事件はどんな感じでしょう。
静:天才能楽師殺害事件。
フ:能とはまた古風な芸能ですね。
静:イケメン俳優の阪戸啓乃進(さかとけいのしん)が青酸カリで殺される。
フ:青酸カリですか! キャサリンらしいですね!
静:うむ。キャサリンといえば青酸カリ、青酸カリといえばキャサリンだからな。青酸カリのないキャサリンシリーズなんて、歌わないテニミュ、踊らないアイマス、カトレアのいないパルフェみたいなもんだ。
フ:パルフェこだわるなあ。
静:そして今回は、登場人物が事件発生前に全員(多分)出てきてるんだぜ! ばっちり序盤予想ができるんだぜ!
フ:おお、それで人物関係はどんな感じですか?
静:一日目が終わった時点でこんな感じ。
阪戸観乃介⇒啓乃進の師匠。啓乃進に期待しており、跡継ぎにしようと思っていた。
舟木美恵子⇒能楽堂の受付。啓乃進の兄弟子のことが好き。
萩麗子⇒能楽堂の後援者で、お茶屋の社長。啓乃進に特別な感情あり?
藤村千尋⇒社長秘書。どういう人か不明。
阪戸盛太郎⇒啓乃進の兄弟子。啓乃進への思いは不明。
フ:で、これだけで犯人なんて分かるものなんですか?
静:えーと、まず青酸カリの入っていたポットがあるんだが、これを飲んだのがキャサリンの恋人の一郎。でもこっちは無事ということは、まだその段階では青酸カリは入っていなかった。その後、師匠と啓乃進とで二時間稽古。稽古中は能楽堂に施錠して一切の人の出入りなし。稽古が終わって師匠だけ先に出てくる。後片付けをして出てくるはずの啓乃進がなかなか来ないので見に行ってみると、青酸カリを飲んで息絶えた啓乃進の姿。
フ:ということは毒を入れることができたのは師匠だけ?
静:そういうことらしい。でもその師匠が、誰も能楽堂に出入りしてないっていうんだから、自分で自分が犯人だって証言してるようなもの。
フ:全然怪しくないですね。
静:そう見せかけておいて、というパターンもあるぜ。
フ:静夜さんはどう思いますか?
静:まずポットだが、狩矢警部によると、一郎の指紋すらなかったらしい。
フ:はあ。
静:ということは、ポットごとすりかえられた、というのが正しいだろう。ポットのすりかえは多分間違いない。
フ:ふむふむ。
静:とすると、ポットを取り替えることができる場所にいた人間が犯人ということになる。
フ:稽古が始まる前、全員が出ていくときに、ということですか。
静:うむ。それが一つの考え方。で、もう一つ。
フ:それは?
静:稽古をしていたのが啓乃進じゃなかった、という可能性。
フ:は?
静:能ってのは能面をかぶるだろ? だから既に啓乃進は殺されていて、二時間も別の人間が師匠に稽古をつけてもらっていた、っていう可能性。
フ:ははあ……それで師匠が出ていった隙に、かくしておいた死体を能楽堂の舞台に上げて、ということですか。
静:もしその理論を取るとするなら、犯人は兄弟子の盛太郎しかいない。いないんだが……。
フ:なんでしょう。
静:それをにおわせる表現が序盤で既にあるんだよな。山村美紗的に、序盤から疑われる人間はたいてい犯人じゃない。それが引っかかる。それにいくら能面かぶってても、二時間も稽古してればばれるだろ、普通。
フ:なるほど。じゃあ現時点で一番怪しいのは?
静:まあ多分兄弟子で決まりなんだけど、社長秘書が案外犯人だったりすることもあるんじゃないかな。何しろ全然情報ないから、この人。
フ:それだけですか。
静:というわけで、一気にキャサリン編いくぜ!
【怒涛のごとくキャサリン編クリア】
静:やべえ、俺って天才?
フ:いやー、参りました。まさか静夜さんの推理が『そこで当たってるとは』。まったく予想だにしてませんでした。びっくりびっくり。
静:まあ殺害方法とかは全く駄目だったけどな! そりゃ情報不足状態では無理だろう。でも推理とかする余地がないのは明子編もキャサリン編も同じだな。あー、最後くらいは密室の謎解きとか出てくるのかな。
フ:何か、読み物としては面白いんですけど、謎解きをする楽しみがないですね。
静:逆転裁判の劣化版みたいだな。
フ:劣化言わない!
静:じゃ、最後は小菊編か。あまり興味ないけど。
フ:昔中学生のとき、静夜さんが『山村美紗買おー』って適当に小説買ったら小菊のでしたよね。
静:そんな昔のことは忘れた。つーかキャサリンの長編って少なかったんだよ!
フ:それではいきましょうか。事件はどんな感じですか?
静:一日目終了時点で、今回の容疑者は四人。被害者は舞妓さんの豆雛。
フ:その四人というのは?
津久井勉⇒織物屋『津久井』の社長。豆雛はお気に入りの舞妓。
高木仁⇒織物屋『津久井』の専務。次期社長。豆雛とは無関係。
鏡由起哉⇒織物屋『津久井』の直営店店長。豆雛とは一緒に写真を撮ったりもしているが、無関係を装っている。
寿々乃⇒祇園の舞妓で、小菊の妹分。豆雛の同僚だが、あまり良い関係ではなかった。
フ:さて、誰が犯人ですか?
静:さあねえ。今回はうまく容疑が等分されてて難しいな。でも犯人は寿々乃。
フ:ほう、それは何故。
静:一つはキャサリン編、明子編との犯人像のバランス。
フ:それはまたすごい理屈ですね。
静:ゲームだからできる技だよ。まあ、無難な線を追及していくと、鏡に惚れた寿々乃が、鏡と仲良くしている豆雛に嫉妬。えいっ、というところかな。
フ:うわ、またえらい単純な。
静:これはね、前二つと違って計画犯じゃない。衝動殺人だよ。豆雛が殺される前に言い争いになってたっていう証言もあるみたいだし。まー誰が犯人かは現状でまだ分からないけどね。たとえば次に事件が起こったときとかに『犯人の立ち位置』にいる奴がアウト。
フ:ふむふむ。では静夜さんの予想が正しいかどうか、一気にクリアまでいきましょう!
【そうこうしているうちに小菊編クリア】
静:つまんね。
フ:第一声がそれですか。
静:だってねえ、何これ、密室? 密室馬鹿にしてんのか。二人目の犠牲者が出る直前の『鍵がない!』っていう台詞でもう全部分かった。馬鹿にしすぎ。そんなちゃちなトリックは金田一と探偵学園Qで鍛えられてんだよ!
フ:コナンはいいんだ。
静:いやもうほんとありえない。あの『密室の女王』の名をほしいままにした山村美紗が、こんなトリック使う? 花の密室殺人事件のあの奇想天外なトリックはどこへ? キャサリンと小菊と明子出せば売れるっていうこと? 消費者なめんなよ。
フ:いやいやいや。だってこれドラマ調なんですから、あまり本格的な推理にしてしまうと二時間じゃクリアできなくなりますから。
静:せっかく久しぶりに推理ができると思って楽しみにしてたのに! 裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったんだ!
フ:で、小菊編はどうでしたか。
静:小菊めっちゃかわいい。
フ:あなたは本当に萌えに生きてるな。
静:舞妓さんって顔真っ白で気持ち悪いじゃない。
フ:あんた今すごい喧嘩売った。
静:でも小菊の素顔ってすげーかわいいの。小動物系。
フ:言いたいことは分からなくもないですが。
静:キャサリン=美人、明子=綺麗、小菊=可愛い、という感じかな。
フ:それで本編そのものはどうでしたか。
静:小菊編は暗号があったでしょ。あれの解き方がね。
フ:難しかったですか、簡単でしたか。
静:いや、もちろん簡単。小学生でも分かるよ。暗号解読にいたるまでにヒントが鬼のように出るから。ただ、惜しむらくはヒントを出す時期がね。そういうのはどこかゲーム序盤で伏線のように出しておけばいいんだよ。暗号解読のやり方をさ、暗号解読場面の直前に出されるんだよ? それは数学の公式を教えられて、この通りにやりなさいって言われてるようなもの。
フ:つまらないですね。
静:つまらないんだよ。このゲームは根本に推理するっていうところが抜けてる。というか、推理という言葉を間違って使ってる。ゲーム中、普通に推理モードとかあるけど、そんなの今までの会話で出てきたことの繰り返しだし、はっきりいって及第点に遠く及ばない。
フ:ゲームの趣旨は推理じゃないってことですか。
静:そうだね。あくまでこれは山村美紗のキャラクターたちによる二時間ドラマの三本立てなんだよ。だから推理を期待していると大ハズレ。そうではなくて二時間ドラマを見るつもりでゲームをすると『いいお話だったね』で終わることができる。
フ:いいお話でしたか。
静:山村美紗が好きなら問題ないんじゃない? 三本ともそんな感じの終わり方だったし。でも一つだけ言わせてもらうなら、推理のない推理ゲームは、ひぐらしのいない雛見沢村、エヴァのない第三新東京市、カトレアのいないパルフェみたいなものだ。
フ:カトレアこだわるなあ。
静:ま、読み物として買うならいいけど、推理ゲームとしてはオススメしないよ。
フ:じゃあ読み物として買う価値はありましたか。
静:……。
フ:いや、そこで黙らないでください。
静:ぶっちゃけこれを買うくらいならな。
フ:はい。
静:当初の予定通り、『どきどき魔女──
フ:というわけで! 今回もお疲れ様でした! 5回目をどうぞご期待ください!
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