夜。

 誰もいなくなった病室。機械の音だけが規則正しく鳴り響く病室。

 動くもののない病室。空気の流れすら感じることができない病室。

 その、少年の右手が、ゆっくりと持ち上がる。

 その、少年の両目が、ゆっくりとひらかれる。

 自分の手の先に、暗い、暗い天井があった。

「……目覚めてみても、闇の中」

 少年は呟く。

 世界は救われたのに、自分の周りだけはまだ暗くて。

 誰もいなくて。

 寂しくて。

 少年は、涙を流した。





「知らない天井だ」






The END






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