「結局、まだ出ることはできないんですか」
 イリーナの質問にティナは小さくうなずく。
 ラグナからはまだ出航許可がおりなかった。もう少しして落ち着いたらかまわないが、現状これだけ混乱している中で何かあったら困る、というのが言い分だった。もちろんそれが自分たちを心配してくれたものだというのは分かるのだが、それでもティナは焦っていた。
 カインの記憶が徐々に戻りつつある。日常的な会話ならばもう問題ない程度には回復している。ただ、自分たちのことだけが綺麗さっぱりと抜け落ちている。
 急いだからといって何かが変わるわけではない。だが、カインが元に戻っていくのに仲間たちのことが思い出せないのは逆に、辛いのだ。
 ティナは、カインにかけられた言葉を全て覚えている。どんなときに、どんな優しい言葉をかけてもらったか。その命をもって助けてもらったこともあれば、逆にこの腕を失っても彼を守ったこともある。それだけ、自分とカインとの間には深い絆が出来上がっているのだと思える。
 だが、その絆も、彼が覚えていてくれてこそなのだ。
「じゃあ、この国でまだ会ってない人のところにでも行きましょうか」
 イリーナが提案する。確かに会っていない人間はいるだろうが、これ以上カインに関係する人物がいただろうか。
「ティナさんは知らないですよね。カインが初めてこの世界に来たとき、エアリスと一緒にカインを保護した人が、今ガーデンにいるんですよ」
 初耳だった。いや、そういえば初めて出会ったときにそのようなことを言っていたような気がする。あの頃はあまりに多くのことがあってよく覚えていないことの方が多いのだが。
「どなたですか」
「魔女、イデア・クレイマー。もっとも今は魔女の力のほとんどがなくなってるみたいだけど、カインがこの世界に来たころの話とかは聞けるんじゃないかな」
 無論、ティナは早速向かうことにした。












PLUS.186

最初の魔女







the first witch






 照明が完全に消えたとはいえ、非常灯は電源とつながっておらず、その場で点灯するようになっている。ほのかな明かりが部屋を照らす。薄暗い、不気味な雰囲気がその場に漂う。
「停電? にしては、妙だな」
 ブルーはもちろん、これが故障だのなんだのと、都合よく考える人間ではない。ハオラーンからの攻撃が連続して続いているこの時期にこのようなことが起こった。それはつまり、ハオラーンの仕業に違いないのだ。
「竜にモンスターの次は人間か。ハオラーンめ、随分と用意周到だな」
 その言葉に一同が驚いてブルーを見る。
「どういうことだ?」
「どうもこうもない。こんな時期に自然に停電するなんてできすぎだ。これは誰か人間の手で引き起こされたものだ。だとしたら敵しかいないだろう? それにわざわざ停電させるなんていう方法を使うくらいだ。知性のある人間でなければ思いつかない方法だ」
 確かに理屈を説明されればその通りだが、この状況で冷静に判断できるブルーがただものではないということだろう。もっとも、長く旅を続けてきたメンバーにしてみれば当然のこととして受け止められたが。
「問題は何を狙ってきたものか、ということだ。よく考えてみるとおかしな話だ。竜だのモンスターだのけしかけられていたけれど、目的に一貫性がない。邪龍は僕たち代表者を攻撃しにきた。ワグナスがモンスターをけしかけたのは月の涙を落とすためだ。となると、ハオラーンがしかけたものだとしても、それぞれ行動している者たちは目的が違うんだ」
「じゃあ、次の連中は俺たちを狙ったものだとは言い切れないということか」
 スコールがまとめる。
「僕らの中の一人、という可能性もある。多分邪龍なんかは僕を狙ったんだろうしね。敵が何者かさえ分かればこちらの手も決まるんだけど、この状況じゃお互い連絡も取れない」
 何しろ放送が通じないのだ。もっとも、放送などをかけてしまっては敵にもこちらの動きがつつぬけになってしまうのだが。
「でも、停電なんていう方法を取るような相手だ。正面からではなく──」
「暗殺という手段をとる、ということだな」
 その部屋の影から声がする。他に誰もいなかったはずなのに、と全員が一斉にその場所を確認する。その影の中に、別の影があった。
「クライド。相手が分かるのかい」
 愛犬インターセプターを失ったシャドウであったが、表面上は彼の様子に変化はない。ただ、彼を唯一理解している存在がなくなったというのは大きな衝撃だったのは間違いない。
 それを悟らせないというのは、この人物がそれだけたくましいということだ。こういう言い方はよくないが、カインも少し自分を罰するばかりではなく、精神的な強さを持ってほしかった。
「ハリードが来ている。交戦したが、逃げられた。このガーデンの中のどこかにまだいる」
 ラグナとキロスに緊張が走る。その『ハリード』という人物の強さはこの世界に残っていた。ユリアンやモニカから何度も聞かされていた。ユリアンも剣の腕前だけならアセルスやティナに負けはしない。人間としては最高レベルに到達している。
 だが、ハリードはさらにその上を行く。曲刀カムシーンを手に、間合いを計らせずに、気付けば首をはねている。どちらかといえばキロスの戦い方に近い。だが、その実力は本物だ。
「他には?」
「行動を共にしている者は今までにほぼ片付けている。ハリードが最後の一人」
「だとしたら、狙いは一つだな」
 ラグナが言う。ブルーたちには情報が伝わっていないので、その目的が見えてこない。
「どういうことですか」
「ハリードが狙ってるのはサラの命だ。理由は分からないけどな」
 サラ──と聞いて、PLUSに行っていたメンバーが一瞬戸惑う。そう、同名の代表者がPLUSにもいた。
(偶然か?)
 ブルーは自分に問いかける。まさか、だ。偶然であるはずがない。『サラ』という名前を持つ代表者が二人。これにはきっと別の、世界の意思が働いているに違いない。
「サラを守らなければ」
「ファリスとユリアン、モニカ、レノがついている」
 クライドは伝令係といったところか。だが、ハリードが相手だというのなら、そのメンバーではいささか不安が残る。
「すぐに行く」
 スコールが剣を手に取る。リディアも頷いた。
「スコール、リディア、セルフィ。君たち三人にそちらを頼む。僕とアセルスは万が一に備えてここに残る。ここには『指導者』がいるからね」
 お互いにやるべきことを確認しあうと、スコールたちはクライドの先導ですぐに動き始めた。四人を見送ってからブルーはため息をつく。
(サラ──死食の日に生まれた、アビスを体内に封じる役割を帯びた少女)
 そしてこの世界に来るときにアビスを封じ、精神を眠らせたままやってきた。それを保護したのが同じく死食の日に生き残ったもう一人の少年、ゼロ。
(そして、サラ──カオスの力を受けたマシンマスターが憑依した少女)
 カオスの力、マシンマスターの精神がその身に入り込んでいたため、まだ数歳でしかない少女なのにとても多くの知識を宿していた。
(ワグナスが求めていた月にあるという『何か』。二人の『サラ』。そしてリノアやレイラの母、ジュリア・ハーティリー)
 今動いているこの情報は、必ず絶対に裏でつながっている。そうでなければ、わざわざカオスを倒したこの時期を狙って動くはずがない。カオスが倒れたからこそ、この話が大きく動いている。ブルーはそう確信している。
(カオスの脅威は消えた。そして吟遊詩人をはじめ、さまざまな思惑が浮上してきたということか。その鍵になっているのは、おそらく──)
「あ、その顔は分かったみたいだね」
 また別の声がした。
 だが、その声の正体をブルーは予測がついていた。思えば自分はこれだけその人物のことを考えていながら、会うのはこれが初めてだ。なるほど、確かに──似ている。
「レイラ、か」
 非常灯の下でも分かる浅黒い肌。だが、それが逆に見た目に活動的な、好ましい印象すら与えるのが妙に気に障った。
 何故だかブルーは苛立ちを覚えた。その感情の正体に気付いて、少しおさまる。
(リノアは僕に──僕たちに優しかったからな)
 あまり意識はしていなかったが、案外自分はあの弱い女性を気にしていたらしい。もちろん女性としてではなく、仲間としてだが。
 その理由も今ならば分かる。自分に向かって兄弟同士で争うのはよくないと言った二人の女性。エミリアとリノア。エミリアは自分の言葉を聞き入れてくれなかったブルーを見限ったが、リノアはそうではなかった。その差だろう。
 と同時に、ブルーはレイラがこの場に現れたタイミングについて、充分に理解していた。
「スコールに会いたくないから、彼がいなくなった途端に出てきたのか」
 む、とレイラが感情を露にする。この程度で動揺するようでは自分の相手ではない。
「何をしに来た、魔女」
 ブルーが敵意をむき出しにして尋ねる。今度はレイラがそれを逸らしながらため息をついた。
「別に、私はただ遊びに来ただけだから。でもま、ハオラーンが私をのけものにするから、ちょっと事態を引っ掻き回そうとしてるだけ」
「どういうことだ?」
「知りたいんでしょ? 母様の居場所」
 ブルーは緊張した。
 これは、情報提供者がわざわざ来てくれたと喜ぶべきなのか。それとも何らかの罠がここに張り巡らされているのか。
「教えてくれるのならありがたく教えてもらうが、何故そうしてくれるのかと尋ねてもいいのかな」
「かまわないよ。ただ単にハオラーンを困らせてやりたいだけ。あいつ、世界崩壊はもう間違いないと思い込んでるから、できるだけ障害を大きくして困らせてあげたいの」
「君の目的は世界征服だと聞いたが」
「うん。だから世界崩壊を企んでるハオラーンが強すぎるのは困るでしょ?」
 共同歩調は取ったとしても、完全にハオラーンに協力するというわけではないようだ。まあ、世界を崩壊に導かれるよりは、まだしも征服されている状態の方がましには違いないが。
「じゃあ聞きたい。ジュリアとは何者で、何を考えているのか」
「母様の本当の名前はジュリアじゃないんだけどね」
 レイラが少し困ったような様子を見せた。
「知ってるかなあ。ハイン、っていうんだけど」
「なっ」
 その言葉に敏感に反応したのはラグナとキロスであった。
「知っているのか?」
「知ってるも何も、その名前は……なあ」
 ラグナが困ったようにキロスを見る。そのキロスが頷いてから答えた。
「その名は、この世界では『最初の魔女』として伝わっている」
 最初の魔女、ハイン。それが、ジュリアの正体。
「ジュリアって魔女だったのかよ。じゃあ俺、本当に魔女の騎士になるところだったんだな〜」
 ラグナが案外あっさりとそんなことを言う。その気楽さに思わずレイラが微笑んでいた。
「おじさん、面白いね。自分がどうしてジュリア──ハインに狙われたのかも知らないんでしょう?」
「狙われた?」
「そうよ。ハインの望みをかなえるためには、あなたの子を宿す必要があった。それがかなわなくなって彼女は絶望し、結果としてカーウェイ大佐に体を許した。だからまた『できそこない』の魔女を作ることになってしまった」
 それが──リノア、なのだ。
「まあ、リノアのことはおいといて、母様がそれを望むのは仕方のないことなの。何しろ預言で、指導者と魔女の血が合わさった時に、母様の願いがかなうとあったから。だから母様は自分があなたと結ばれるのを諦めて『できそこない』を使った。ほしいのは魔女と指導者の血を引く子供。だからリノアが『できそこない』でも母様には関係ない。リノアは何があってもスコールを好きになるよう、プログラミングされていた。魔女の直系のリノアと、指導者の直系のスコール。この二人を結ばせるために、母様はいろいろな策略を使った。魔女戦争は、アルティミシアが黒幕なんかじゃない。この魔女戦争を通してスコールとリノアを結びつけるために、母様がおこしたもの。アルティミシアは利用されただけ」
 それを聞いた時には、さすがのラグナもがっくりと疲れた表情を見せた。
「おいおい、それじゃ、全ての黒幕はジュリアだってのか? ガルバディアで俺に近づいたのも、全部そのためだったってことか? それがうまくいかなかったから魔女戦争を起こしたってのか?」
「そういうこと。ちなみに私が生まれたのは、リノアがスコールを口説けなかったときの保険。相手にキロス・シーゲルが選ばれたのは、多分母様の気まぐれ。その方が面白そうだからとかなんとか。ま、私には分からないことだし、関係もないことだけど。でも」
 レイラが少し寂しげに笑った。
「昔から私の相手がスコールだっていい聞かされて育ったから、正直、本気でスコールのことが好きなんだ。ま、意識を奪ってスコールを手に入れることもできたし、実際やってたんだけど、それだと張り合いなくてつまんなかったし。大好きなスコールは手に入らない。手に入るとしたらスコールとしての意識はない。いたしかゆし、ね」
「ジュリアは、どうして指導者の血を必要としていたんだ?」
 ブルーが話を切って尋ねる。
「預言があったの。指導者と魔女の血を引く者が、魔女の宿命を断つって。要するに、最初の魔女ハインを殺せるのは魔女の血を引くものであり、同時に指導者の血を引くものでなきゃいけないっていうことだったんだけど」
「つまり、自分で子供を産んで、親殺しをさせるつもりだったということかい?」
「そう。さすがね、肉親を殺すということを不快に思わないのはあなただけね」
 暗にルージュのことをにおわされたが、それにかまっている場合ではない。ブルーは話を続ける。
「ジュリアは死ぬことができない?」
「不老不死だから。普通に傷つけられてもすぐに回復するから無理みたい。だから母様は私やリノアみたいな『できそこない』じゃなくて、指導者の血を引く『完全な人間』がほしかった。自分を殺させるために」
 なるほどな、とブルーは頷く。
「ただ、僕たちがジュリアに会いたいと思ったのは、単にハオラーンの居場所を突き止めたかったからという理由だ。それなのに君はこんなに詳しく彼女のことを教えてくれた。そこにはもちろん、理由があるんだろう」
「たとえば?」
 試すようにレイラが言う。
「ジュリアの居場所を僕らが知れば、ハオラーンが世界を崩壊させることの障害となる。そこから考えれば、ジュリアはハオラーンの弱点に近いものを持っている、と推測できる」
「すごいね。少ない情報でそこまで導けるなんて」
「ジュリアは月にいる。もしかすると、ハオラーンが邪龍を僕たちにけしかけたのは、僕たち自身が邪魔なんじゃなくて、むしろ月に行くことが可能な移動手段、ラグナロクが邪魔だった、と考える方が正しいのかな」
「すごいすごい。それから?」
「月の涙を落とそうとしていたワグナスを僕たちに殺させたのは、おそらくハオラーンはワグナスに自分の邪魔をされたくなかったんだろうと思う。つまり、ハオラーンもまた、月にいる」
 な、とさすがに全員が驚いてブルーを見つめるが、レイラだけが笑顔で拍手をした。
「さすがだね。うん、ほとんど正解」
「どこか間違っているところが?」
「少しはね。ハオラーンは一方的に母様をおそれているけど、母様にはハオラーンをどうこうできるような力はもうない。ただの不老不死の力しかない。今や魔女の力は全て、別の人間に移ってしまっているから。多分、ハオラーンを止められるとしたら、その人だけ」
「それは?」
「考えれば分かるよ。あともう一つ。邪龍、ワグナスは単順にけしかけただけだけど、次にきたハリード。これについてはハオラーン、多分、本気」
「何故?」
「『代表者サラ』は混沌に近いもの。アビスを体内に取り込むことができるけれど、逆にカオスに精神を支配される可能性もある。だからハオラーンは絶対にサラを殺したい。カオスはこの世界に介入することはできないけど、その眷属はそうじゃないから」
「眷属?」
「そう。カオスの眷属、アビス。あれがこの地上で復活したら、さしものハオラーンも簡単にはいかないっていうこと。もっともそれはあなたたちにしても同じ。アビスが復活したら、この世界がまた混沌の脅威にさらされる。それは嫌でしょ?」
 それは確かにそうだ。だが、だからといって仲間を自分たちの手で殺すことはできない。
「そうか……ハリードが執拗にサラを狙うのは、彼もまた世界を守ろうとしているということか」
「そういうこと。ハリードはゲッシナ朝の生き残り。アビスによって滅ぼされているからその脅威は誰よりもよく知ってるもの」
「だからといって、仲間を手にかけるなんて」
「もしアビスが復活したら、その子だって助からないもの。だったら犠牲は少ない方がいい。違う?」
 違わない。そしてブルーもまたそうした合理的な考えを好む人間だ。
「でも、僕たちは諦めない。仲間を見捨てるなんていう選択肢を、僕らは持たない」
 堂々と宣言する。それを聞いたサラは「そう」とだけ答えた。
「じゃあ一つだけアドバイス。アビスを封じる方法、知りたい?」
 ブルーは一瞬頷きかけた──が、首を振る。
「いや、いい」
 これには逆に、レイラの方が驚いていた。
「どうして?」
「現状で急を要していないのなら、ゆっくりと問題を解決すればいい。魔女がどこに罠をかけているか分からない以上、解決策を与えられるのは僕の勘が危険だと判断している」
「勘なんてものに頼っていいの?」
「僕は今までも勘を大切にしてきたよ。ひらめいたことに後から理屈を考える。その筋が通っていればよし、通っていなければ間違いだったっていうことだ。でも、多分今回は筋が通っている」
「それは?」
「何故君がここに来たのかという視点でものを見る。君もまた世界を征服するために活動している。君のアドバイスに従って行動していたら、いつかは君の思い描く未来がそこに現れるのは間違いないことだ。だったら、君の言うことは聞けない」
「うーん、用心深いなあ」
 レイラは少し困ったように首をかしげた。
「ま、いいか。これで充分ハオラーンを困らせることはできるだろうし、みんながどうするかはみんな次第だもんね」
 くるり、とレイラは振り返る。
「私もいろいろな力を手に入れたけど、あと一個、どうしてもほしいものがあるし、しばらくは敵に回るつもりはないよ」
「ほしいもの──スコールかい?」
「あたってるけど、違うよ」
 肩越しに振り返ったレイラは、残忍な笑みを浮かべていた。
「スコールは私を見てくれない。だったら、スコールを殺して、永遠に私のものにする。スコールも食べて、私の血肉、力になってもらう」
「君は……」
 ぞくり、と背筋に悪寒が走る。
 そうだ。何か、おかしい。あまりにも雰囲気が違ったので今の今まで気付かなかったが。
 目の前の女性は、自分と、同じ。

『代表者』の力を、備えている。

「どうして、君が代表者なんだ?」
「それはね、食べたから」
 ぺろり、と舌で唇を舐める。
「美味しかったよ、サラちゃん」
 そして、その女性は闇に溶けて消えた。
(──そうか)
 ブルーは顔をゆがめた。隣にいるアセルスが、心配そうな表情で自分の腕を取る。大丈夫、というふうに笑顔を見せる。
(小さなサラは、あの魔女に食べられたというのか)
 そういえばエウレカに戻ったとき、彼女の姿はなかった。それに、どうしてあの神殿にレイラとスコールが入ってこられたのか、それも考えてみればおかしな話だ。
(サラが死んだのか。カインが記憶を取り戻したら、きっと悲しむだろうな)
 頭痛がした。






187.死食の子

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